GA春フェア2024 QR扫码特典「入学式」
#1 - 2024-3-20 17:38
仓猫
「おかあさん。このドレス、どうでしょう」
おかあさんに質感など教えてもらいながらドレスを選んだ。
目が見えなくなってからは最終チエックをおかあさんにお願いしている。
「ばっちりよ。きれいになったわね~」
おかあさんのほくほくとした声が聞こえた。
この声の感じは、いい感じってことだと思う。
「じゃあ、行きましょうか」
「タクシー呼ぶわね」
今日は大学の入学式だった。
がんばって受かった大学だった。
いい出会いがあればいいなって、心が弾んでいた。
浜松町のイベントホールまでおかあさんに連れてきてもらった。
「小春、肩に花びらが乗ってる」
「桜ですか? もうそんな季節なんですね」
「取れた。じゃあ後で迎えに来るわね」
会場の前でおかあさんと別れた。なんとなく'ひとりで出席したかった。これから通っていかないといけないんだから、ひとりで人学式ぐらい出てみたかった。おかあさんは入学式が終わるまで近くのカフエで待つと言う。ありがとうって、私はイベントホールに入っていった。
少し早めに到着した私は階段状になったイベントホールで座っていた。
たぶんまわりに人はいない。私は早くに到着しすぎたみたいだ。
どんな場所なのかはもう見えない。
けど、なんとなく広い場所なんだろうって思った。
次第にぞろぞろと人が集まっていく雰囲気があった。何人、何百人、何千人と集まっていくのでしょうか。よくよく考えると学部と学科数を数えても、新入生千人もいないや。
みんな知り合いはいないのでしょうか。会話はない感じです。けれど、様子見をしていた人たちが「こんにちは~」と挨拶を始めて、次第に会話になっていった。
すっかり入学式開始前にはガヤガヤしていて、いいないいなって思った。
学長の挨拶から始まって、新入生の心構えや、事務連絡等があって、入学式は終わった。
あーあ。終わっちやった。
そう思った。誰か話せる人でもひとりできたらよかったけど。そう思って、自分から話しかけるチャンスもなく終わってしまったことに、残念に思った。
思えば高校も病気がちで休みがちだったし、何人かいた友達も学校を辞めてしまってからは疎遠になっている。そういえば何年も友達がいないんだなあって思った。すっかり友達の作り方も忘れちやっている。
え。私、大丈夫? これから孤独なキャンパスライフを過ごすかも? って心配になった。
けど、まあ、今日は仕方ない。切り替えよう! そう思っていたときだった。
「もしかして、見えないんですか」
女の子の声がした。
私かな? って思って'私だといいなって思って、「あ、はい」って答えていた。
「じゃあ、出口までいっしょに行こう~」
「え。いいんですか」
「いいよいいよ~」
話しかけてくれた人は、早瀨優子さんという人で、なんと同じ学科だった。
同じ学科ですね! だね~! って盛り上がった。
入学式で同じ学科の人と知り合えて、すごくうれしかった。
どうにか距離を縮めたくて
「優子ちゃんって呼んでいいですか?」
って言ってみた。
言ってみて、名前呼びの提案がいきなりすぎた気もしてきて、すごく恥ずかしくなった。
「じゃあ私は小春ちゃんって呼ぶね」
優子ちゃんはそう言ってくれて、心からほっとした。
ほっとしていると、
「小春ちゃんのそのドレスかわいいね」
って優子ちゃんは言ってくれた。
その言葉にうれしくなってその場でくるりと回る。
「おかあさんはみんなスーツだろうからスーツにしたらって言ったんですけど、せつかくの晴れ舞台なので、好きなのを着ました。自分では見えないんですけど、似合っていますか」
優子ちゃんが褒めてくれただけで、気合いを入れて選んだ甲斐があった。
すると優子ちゃんは、
「すごく似合っているし、かっこいいよ!」
って、褒めてくれた。
「ね。明日さ。正門で待ち合わせない? オリエンテーションとかいっしょに受けようよ」
そんなことを優子ちゃんは言ってくれる。
「ぜひぜひ」
飛び上がるほどうれしくて、思わず目頭が熱くなっていた。
何年ぶぷりの友達だろうって。
これから、もっと友達を作れればいいな。
すてきな出会いがあればいいな。
ふと、男子ふたりの会話が聞こえる。
「浜松町にごっつうまいとんかつ屋があるんて。無菌豚っていうの使って中がミディアムレアなんて」「とんかつか~、重いな~」「じゃあ何が食ベたいねん」「カレーかなあ?」「そんなん言って、空野、カツカレーにするんやろ」
そんな楽しそうな会話に、私もとんかつが食ベたくなってしまった。
「あの人たちは寮生なのかな~。もう仲良さそうでいいね」
と、優子ちゃん。
「これから、本当に楽しみですね」
そう口にしてみると、ワクワクと心が躍った。
大学生活が始まることが楽しみで楽しみで仕方なかった。
《入学式 了》
おかあさんに質感など教えてもらいながらドレスを選んだ。
目が見えなくなってからは最終チエックをおかあさんにお願いしている。
「ばっちりよ。きれいになったわね~」
おかあさんのほくほくとした声が聞こえた。
この声の感じは、いい感じってことだと思う。
「じゃあ、行きましょうか」
「タクシー呼ぶわね」
今日は大学の入学式だった。
がんばって受かった大学だった。
いい出会いがあればいいなって、心が弾んでいた。
浜松町のイベントホールまでおかあさんに連れてきてもらった。
「小春、肩に花びらが乗ってる」
「桜ですか? もうそんな季節なんですね」
「取れた。じゃあ後で迎えに来るわね」
会場の前でおかあさんと別れた。なんとなく'ひとりで出席したかった。これから通っていかないといけないんだから、ひとりで人学式ぐらい出てみたかった。おかあさんは入学式が終わるまで近くのカフエで待つと言う。ありがとうって、私はイベントホールに入っていった。
少し早めに到着した私は階段状になったイベントホールで座っていた。
たぶんまわりに人はいない。私は早くに到着しすぎたみたいだ。
どんな場所なのかはもう見えない。
けど、なんとなく広い場所なんだろうって思った。
次第にぞろぞろと人が集まっていく雰囲気があった。何人、何百人、何千人と集まっていくのでしょうか。よくよく考えると学部と学科数を数えても、新入生千人もいないや。
みんな知り合いはいないのでしょうか。会話はない感じです。けれど、様子見をしていた人たちが「こんにちは~」と挨拶を始めて、次第に会話になっていった。
すっかり入学式開始前にはガヤガヤしていて、いいないいなって思った。
学長の挨拶から始まって、新入生の心構えや、事務連絡等があって、入学式は終わった。
あーあ。終わっちやった。
そう思った。誰か話せる人でもひとりできたらよかったけど。そう思って、自分から話しかけるチャンスもなく終わってしまったことに、残念に思った。
思えば高校も病気がちで休みがちだったし、何人かいた友達も学校を辞めてしまってからは疎遠になっている。そういえば何年も友達がいないんだなあって思った。すっかり友達の作り方も忘れちやっている。
え。私、大丈夫? これから孤独なキャンパスライフを過ごすかも? って心配になった。
けど、まあ、今日は仕方ない。切り替えよう! そう思っていたときだった。
「もしかして、見えないんですか」
女の子の声がした。
私かな? って思って'私だといいなって思って、「あ、はい」って答えていた。
「じゃあ、出口までいっしょに行こう~」
「え。いいんですか」
「いいよいいよ~」
話しかけてくれた人は、早瀨優子さんという人で、なんと同じ学科だった。
同じ学科ですね! だね~! って盛り上がった。
入学式で同じ学科の人と知り合えて、すごくうれしかった。
どうにか距離を縮めたくて
「優子ちゃんって呼んでいいですか?」
って言ってみた。
言ってみて、名前呼びの提案がいきなりすぎた気もしてきて、すごく恥ずかしくなった。
「じゃあ私は小春ちゃんって呼ぶね」
優子ちゃんはそう言ってくれて、心からほっとした。
ほっとしていると、
「小春ちゃんのそのドレスかわいいね」
って優子ちゃんは言ってくれた。
その言葉にうれしくなってその場でくるりと回る。
「おかあさんはみんなスーツだろうからスーツにしたらって言ったんですけど、せつかくの晴れ舞台なので、好きなのを着ました。自分では見えないんですけど、似合っていますか」
優子ちゃんが褒めてくれただけで、気合いを入れて選んだ甲斐があった。
すると優子ちゃんは、
「すごく似合っているし、かっこいいよ!」
って、褒めてくれた。
「ね。明日さ。正門で待ち合わせない? オリエンテーションとかいっしょに受けようよ」
そんなことを優子ちゃんは言ってくれる。
「ぜひぜひ」
飛び上がるほどうれしくて、思わず目頭が熱くなっていた。
何年ぶぷりの友達だろうって。
これから、もっと友達を作れればいいな。
すてきな出会いがあればいいな。
ふと、男子ふたりの会話が聞こえる。
「浜松町にごっつうまいとんかつ屋があるんて。無菌豚っていうの使って中がミディアムレアなんて」「とんかつか~、重いな~」「じゃあ何が食ベたいねん」「カレーかなあ?」「そんなん言って、空野、カツカレーにするんやろ」
そんな楽しそうな会話に、私もとんかつが食ベたくなってしまった。
「あの人たちは寮生なのかな~。もう仲良さそうでいいね」
と、優子ちゃん。
「これから、本当に楽しみですね」
そう口にしてみると、ワクワクと心が躍った。
大学生活が始まることが楽しみで楽しみで仕方なかった。
《入学式 了》